四輪駆動方式

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テンセグリティー構造を活かした身体操作のために、『四輪駆動方式』を提案します。

私たちのカラダは小さなテンセグリティー構造が集まり、大きなテンセグリティー構造として機能しています。
テンセグリティーといいますのは、バークミンスター・フラーによって命名された構造システムで、張力(テンション)と統合(インテグリティー)を組み合わせた造語です。

これは圧縮力と張力(引っ張る力)、”押す力”と”引く力”という相反する力のバランスによって、構造が自己安定化するシステムのことです。

テンセグリティーは地球上のあらゆる生命がもつ構造です。
(細胞もその中に細胞骨格を持ち、テンセグリティー構造によって形を維持しています。)

テンセグリティー構造

私たちのカラダを構成する206個の骨は、だるま落しのように積み重なっているのではなく、筋肉や腱、靭帯、筋膜の張力によって力の釣り合いがとれて安定しています。
全体として複雑なテンセグリティー構造を作って体を支えており、それはつまり、出来るだけ少ないエネルギーと質量で自己安定化をはかっているということなのです。


テンセグリティー構造の動きについて分りやすくお話しますと、膨らんだ風船に例えると良いかと思います。 風船のどこかを押したり、引っ張ったりしますと、全体でその力を受け止め、形が変わります。
丈夫でありながら、同時に柔らかいですね。

私たちのカラダは全身に点在する骨を、軟部結合組織(筋肉や筋膜など)が引っ張ることで、全身がひとつに繋がった状態で、その形を維持していますから、どこか部分的に力(ごく小さな力でも)を加えても、それは全身に影響が及ぶということになります。

手技療法やボディワーク(筋膜リリースやロルフィングなど)の世界では、この考えがベースになっています。


「動作スキル」というものを考える際、このテンセグリティー構造を活かすことは、自然な動きをするという点で、とても重要なポイントになります。

がしかしながら、人間のカラダは腕や脚が体幹から伸びて出ています。
風船のように、ひとかたまりではありません。
そのため、体幹と四肢(腕や脚)のつながり方はテンセグリティー構造だとしましても、ばらばらに振り回すように動かせてしまいます。

それは、私たちは無意識下で、自分たちのカラダを
「四角い箱から棒が出ている」
と思っているからです。

全身はつながっている、ひとつのものとして動くことが重要だと、頭で理解できても、カラダは簡単には納得してくれないのです。(これが無意識下ということです)

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では、どうしたらカラダが納得してくれるのでしょう?

そこで私JIDAIは、骨盤、背骨、肩甲骨に着目しました。

骨盤、背骨、肩甲骨、それぞれの大切さは、いろいろなところで言われていますから、皆さんもよくご承知のことと思います。
<オーガニック !! トレーニング>ではこれらを単体として見るのではなく、つながったものとして見ます。

それが、『四輪駆動方式』になるのですが、それはどういうことか?

左右の肩甲骨が前の2つの車輪、左右の寛骨(骨盤)が後ろの車輪、その前輪と後輪をつなぐ車体の軸になるのが、背骨というわけです。

図1

こんな感じですね。(上図)

この四輪駆動の構造がテンセグリティー構造だとイメージしてみて下さい。
(背骨は真っすぐな硬い棒ではなく、ジャバラ構造で捻りも可能なパイプだと思って下さい。)

どうでしょう、立体的に動く様子を思い浮かべていただけますでしょうか?
うねらせるように、動かしてみて下さい。

骨盤(左右の寛骨ーかんこつ)を左右の手の平に置き換えてみましょう。
目の前で合掌をします。その手の平を一方は向こう側へ、もう一方は自分側へというように、互い違いにぎゅうっと強くこすり合わせてみて下さい。

そのこすり合わせの動きをする骨盤によって背骨が螺旋状に肩甲骨に向かって、下からぎゅるぎゅるぅっと伸びていくような感じになることがイメージできると思います。

背骨の螺旋エネルギーが肩甲骨に伝わりますと、捻ったゴムバンドが解き放たれるように、肩甲骨は骨盤と同じような動きと力を発揮するのです。

骨盤が第1点火だとすれば、肩甲骨は第2点火として、手先へとその力を伝えていきます。
(骨盤の第1点火には地面反力の利用も重要になります。)


このエネルギーの発生システムを、強いパワーを発揮したい時には、後輪(骨盤)と前輪(肩甲骨)の動きに時間差をつくります。(「タメ」といわれるものは、この時間差だとも言えます。)
早さ(キレ)が必要な時には、前後輪(骨盤と肩甲骨)を一緒に動かす感じになります。(背骨でつながっているこを、忘れてはいけません。)

この動きをしますと、背骨がくねくねしそうになると思いますが、自分でくねくねさせてしまいますと、力が逃げてしまいます。
ただし、ダンスなどの身体表現の際には、このくねくねやうねりを上手く利用出来ますと、表現の幅が広がると思います。
(歌舞伎や日本舞踊などの和のものは、力を逃がさないように動いているので、一見ずっと真っすぐのままであるように見えます。けれど実際には、こういった力が働いています。女形の色気は、こういったところから顕われてくるんですね。筋力が必要なんです。)


こういった動きに、体重移動という要素が加わり、これは重力(落下)を利用した移動であっても、背骨の波動運動が必ず伴います。(外から見て分るかどうかは別です)
この波動運動は感覚的には伸び縮みに近く、背骨をバネのように使えるということも重要になってきます。
(このことは、呼吸ともつながる大事な要素ですが、話が煩雑になりますのでここまでに。)

しなやかで強い背骨を通じて、4つの車輪(左右の肩甲骨と左右の寛骨)を使いこなす。
これは、動物の動きであると言えるかもしれません。
これが<オーガニック !! トレーニング>が提案する『四輪駆動方式』です。

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『四輪駆動方式』を使うと、どんなメリットがあるのでしょう?

下半身のパワーを容易に上半身に伝えられますから、小手先の動きではなくなります。

その一方で上半身と下半身の動きに時間差をつくれますから、例えば、球の引きつけといったことが行いやすくなります。

サッカーや格闘技などのキック系の動きも、肩甲骨が骨盤の動きを導き出してくれるため、スムーズかつパワフルになります。

部分的な過度の筋力を使わず、全身に分散していますから、ケガや疲労が減少します。

素早く全身を動かせますから、反応が早くなります。

一見小さな動きでも、実際には全身を使っているので大きなパワーが出ます。
(例えば、大きく振りかぶらなくても、パワーを発揮出来るということです。)

全身の連動性が、動きを美しくします。

ちなみに、ナンバといわれる動きは、一般的には、右に左にパタンパタンと向きを変えながら進んで行くと思われがちですが、スポーツなどの世界でいう使えるナンバ(二軸動作)は、この『四輪駆動方式』でいう肩甲骨と骨盤を同時に同じ方向でこすり合わせて進んでいく動きです。

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実はこれまでの『四輪駆動方式』の説明では、まだ不完全なのです。

骨盤が第1点火だとすれば、肩甲骨は第2点火として、手先へとその力を伝えていきます。 (骨盤の第1点火には地面反力の利用も重要になります。)』

ということがお話の中に出てきたことを、覚えていらっしゃいますでしょうか?

この手先に力を伝えるということと、地面反力(地面を押すことで返ってくる力)を利用するということが成立してこそ、真の『四輪駆動方式』になります。

背骨が大切であることは、皆さんよくご存知だと思います。
骨盤や肩甲骨はもちろん大事ですが、それは背骨という大黒柱の支えがあってこそ。

4足動物で考えると分りやすいと思いますが、地面からの反力を前後の脚を通して背骨に伝えています。あるいは背骨の動きが前後の脚を通して、地面を押す力となっています。

人間の場合は2足歩行動物ですが、手で何かを扱ったり力を伝えるということは、基本的に同じだと考えていいと思います。
つまり、腕や脚を通して背骨に(反)力を伝え、あるいは背骨の動きを腕や脚を通して地面やモノに伝えています。

とはいえ、その伝わり方にロスが多いために、無駄に筋力を使ってしまうようなことが起きてしまいます。

そこで大事になるのが、骨盤と肩甲骨ということになるのですが、それらはあくまで背骨と腕・脚をつなぐジョイント(接合)部材なのです。
ジョイント部材としての骨盤と肩甲骨を扱うことで、 背骨と腕・脚の両者を結び付けようということなのです。

このように考えますと、動き・力を生む本質は、背骨と腕・脚との間での力の伝わり方にあるわけですから、ジョイント部材自体にあるのではないとなります。
『四輪駆動方式』の説明が不完全である理由です。

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ではどうしたら『四輪駆動方式』が完全になるのでしょうか?

繰り返しになりますが、大事なことは、背骨に力と動きが生まれることであり、背骨の力と動きが腕・脚に漏れなく伝わることです。
そこで、まず背骨と腕・脚のつながりについてみていきましょう。

図2
  •  ・・・ 股関節
  •  ・・・ 仙腸関節
  •  ・・・ 胸鎖関節(肩関節のうちの1つ)仙腸関節
  •  ・・・ 肩関節のうちの肩鎖関節、肩峰下関節、肩甲上腕関節

脚はどのように背骨につながっているのか?といいますと、背骨の一番下の仙骨という骨が、骨盤(左右の寛骨)を通じて脚(大腿骨)とつながっています。
ですから、骨盤には仙骨と寛骨を結ぶ仙腸関節(図のピンク色の丸印)と股関節(図の赤色の丸印)があるということになります。

腕の場合は、胸骨(胸骨は肋骨を通じて背骨とつながっています)が、鎖骨と肩甲骨を通じて、腕(上腕骨)とつながっています。
ですから、胸骨と鎖骨を結ぶ胸鎖関節(図の黄緑色の丸印)と肩関節(のうちの肩鎖関節、肩峰下関節、肩甲上腕関節ー図の水色の丸印)が、腕と背骨をつなげていることになります。

(上半身の構造と下半身の構造は、上下をひっくり返しただけで基本的に同じですから、鎖骨と肩甲骨を1つの骨として考えてしまった方が、理解はしやすいと思います。)

関節というのは骨と骨をつなぐところであり、そのアライメント(位置関係)の良し悪しは、力の伝わりの良し悪しになります。

例えば、脚からの力は、股関節を通じて仙腸関節へと伝わり、それが仙骨、背骨へと流れていくのですが、その力を真っすぐ漏れなく進ませるには、螺旋状の動きが効率的です。
(拳銃の弾と同じですね。弾丸はスクリュー状に回転しながら飛んでいきます。)

ということは、脚から背骨に力を漏れなく伝えるには、仙腸関節に向かって股関節を捻り込むことです。そのことによって、仙骨に動きが生じ、背骨に力が伝わります。

腕においては、胸鎖関節に向かって肩関節(胸鎖関節も本来は肩関節ですが)を捻り込むことになります。
そのことによって、胸骨に動きが生じ、背骨に力が伝わります。

話が難しくなってきましたでしょうか。要約しますと、

股関節と仙腸関節をしっかりつなぎ、仙骨の動きを導き出すことで、背骨に力を伝える。
肩関節 と胸鎖関節をしっかりつなぎ、胸骨の動きを導き出すことで、背骨に力を伝える。

ということです。

ここで言う「しっかりつなぎ」を担っているのが、最初にお話しました、ジョイント部材としての骨盤であり、肩甲骨ということになるわけです。

骨盤も肩甲骨も大きな部材ですから、意識しやすく扱いやすいのですが、本質はここでお話してきたことにあると考えています。

図3

部分を取り出したトレーニングは、それが全体の動きという調和の中で働いてくれなくては
意味が無いとは思いませんか?

 
 

たとえば歩いている時、動いていない部分はどこでしょう?
動いている部分はどこでしょう?

動いていないところはないのです。

漠然と動いていませんか?

動いているかどうか感覚の鈍いところがありませんか?

体全体をひとつのものとして上手に動かすために、体全体に調和を生むために
最も重要なことは、そのための神経回路をつくることです。
全身のあらゆる部分を有機的につなぐ神経回路を密にすることなのです。

では、神経回路とは何でしょう?

簡単に言ってしまえば運動神経ですが、

◆ 位置覚(自分の体の静止したポジション、形を認識する能力)
◆ 運動覚(自分の体がどのような速さ、軌道で動いているかを認識する能力)

の2つが特に重要になります。

これら神経は、筋力や柔軟性が年齢とともにどうしても衰えていきやすいのに対し、
年齢に関係なく発達させやすいといえます。

若いうちは筋力が鈍い神経回路を手助けして(あるいは覆い隠して)くれますが、
それはあなたが本当に望むものですか?

部分的なトレーニングは筋力や柔軟性において、
得てして全体のバランスを崩す要因となり、
ケガや疲労を生じさせやすくさせます。

もちろん、部分的なトレーニングが不必要なわけではありませんが、
大切なことは全体の調和に向かうことです。

そしてその調和は、地球の重力と調和させる必要があるのです。

日常生活、スポーツ、ダンスなど全て、2本足で立って前後左右に移動すること抜きには、あり得ません。
「何か」をするためには、必ず2本の足での体重の受け渡しが必要です。

けれど、一般的にそこのトレーニングを飛ばして、
個別の種目としてその分野特有の技術訓練になってしまっています。

つまり、いわゆるトレーニングは部分的であるだけでなく、大抵の場合、止まった状態、床に寝た状態で行います。
全身で体重を移動させる、重力を感じながら動くという、最も大事なところが抜け落ちてしまっているのです。

移動を伴うトレーニングとなりましても、それは瞬発力、筋持久力あるいは心肺機能を鍛えるためとなってしまいますから、それは「何か」の技術には結びつきません。あくまで○○力のアップです。

個別の種目以前の、体を動かすこと自体の質を上げること、
特に、体重を移動させる技術の質を上げることは、
各人の個別の種目の真の質を高めることになります。

この土台の質いかんによって、その分野特有の技術の質が変わるのは当然ですし、進歩の速度も全く違ってくるのです。

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ダンサー、舞踊家、身体表現者のための『四輪駆動方式』

『四輪駆動方式』は、パワー発揮のようなエネルギー発生システムとしての意味だけではありません。
4つの車輪を結びますと、四角形になります。

図4

こんな感じですね。
この四角形を例えば「こんにゃく」だと思ってみて下さい。
こんな風に変形しますでしょ?
(パソコンでの作図レベルが、こんなものなので、すみません。。。何とかお分かりいただければ。。。)

図5

↑↑後ろから見た場合だけでなく、横から見た場合も、上からでも
さらに、この2つの組み合わせも(立体的によじり捻るような・・・)

なんとか躍動する「こんにゃく」を想像していただければと・・・
そう、まるでディズニーアニメのような。

単に背骨を曲げるのでありません

これはとても大事なポイントです。
背骨を曲げることで、これらの動きをしようとする前に、まず4輪だけを動かすことをしてみて下さい。
肩甲骨と骨盤の4輪それぞれを3次元的に、バラバラに動かします。

「3次元的に」というのが、ピンと来ないかもしれませんが、実際に手をこすり合わせるとお分りいただけると思います。
素直に真っすぐのままではありませんよね?手の平と甲が、交互に見え隠れしますよね?
そんな感じです。

この3次元的に動く4輪の組み合わせが、「躍動するこんにゃく」を生み出してくれるのです。
4輪をバラバラに動かすとはいえ、強い繋がりをもっていますので、同時に一体感もあります。
そのことで、体幹の四角形がまるで「躍動するこんにゃく」のように柔軟に動けるようになるというわけです。

バラバラでありながら、ひとつのものという感じ・・・まさにテンセグリティです。

但し、4輪への意識が薄い場合や、硬い場合には、背骨に頼りがちになってしまいます。
背骨の動きは、これらの動きにプラスしていくとお考え下さい。
背骨を曲げたり伸ばしたりするのは、むしろ一番最後であり、背骨の動きの前に、肋骨などの柔軟性も必要になってきます。

ですから、体幹を鍛えるという場合、安定性を求めるあまり筋肉で固くしてしまわないような注意が必要です。
安定というものを、固めるということで求めるのは危険です。
安定とは、静的均衡ではなく、動的均衡状態であるということを大事にしていただければと思います。

なぜ、背骨の動きは最後なのか?

  • ・美しさのため
  • ・安定性のため
  • ・強さのため
  • ・繊細さのため
  • ・全身性のため

最も動かしやすい(意識しやすい)背骨を先に動かしてしまいますと、4輪や肋骨といった動かしづらい(意識しづらい)部分は、さらに動かしづらくなってしまいます。
もちろん、背骨の椎骨1つ1つを意識的に動かせるのであれば、話は別ですが・・・
4輪、肋骨の動きが、背骨の動きを導き出すようにするのが、いいかと思います。

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改めてエモーショナルボディーワークのことを考えていましたが、ステファンが去年の最後のクラスの後、「NEIROは自然にマイムやるからいいよ」というようなことを 云ってくれましたが、それは完全にこのワークがあったからです。このワークが無かったら、到底今取り組んでいるような公演の・・・

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